• 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31

成恵の日記

 MelonbooksDLランキング週間一位・月間一位、Digiket.comランキング24時間一位週間一位月間一位有り難うございます!
diary_titles.jpg
内容紹介

 縮小学園の二次創作ノベルゲームです!

 前作縮小学園は高校生探偵・地仁田遥の活躍により解決された。
 部長による歴史の改変により、縮小人間たちを虐待・虐殺した事実は消えた。
 が、事件に関わった人物たちには“かつてこういうコトがあった”という記憶だけはきちんと残っている。

 ヒロイン、大紀久成恵。前作で巨大化したまま、調査員として活躍中。
 巨大娘になってからの生活には恥ずかしさがあるものの、自分でも正体の掴めない喜びを感じてしまって、戸惑っている。
 巨大娘になってからは地仁田とコンビを組むコトが減ってしまい、残念に思っている。
 怪しい密輸船が出入りしている海域の調査を依頼され、ハンパネー島の調査に向かった後、消息を絶つ──。

 前作・縮小学園をプレイしていると、より楽しめます!
  diary12s.jpg











スタッフ

イラスト:ふなくら さん
シナリオ:AN-J さん
声優 ──
    大紀久成恵 ── 湊むつみ さん
    新科研会長 ── 綾奈まりあ さん

プロデューサー(という名の雑用) ── 西九条きたらふ

動作環境

OS:Windows/Mac OS Xで動作します。
環境:Adobe AIR(https://airsdk.harman.com/runtime)ページ下部の【AIR runtime including WebKit - version 33.1.1.743】がインストールされている必要があります。

操作方法

・Shiftキー、ESCキー
   右クリックメニューを表示・消し
・Wキー、alt+enterキー
   全画面・ウインドウモード切り替え
・Aキー
   自動読み進み On(クリックで停止)
・Fキー
   強制スキップ On(クリックで停止)
・Ctrl
   押してる間だけメッセージ強制スキップ(スキップはFキーと同等)
・SPACEキー、Delキー
   メッセージウインドウ消し・表示
・PAGE DOWNキー、PAGE UPキー、Up(↑)キー
   バックログ機能
・Sキー…クイックセーブ
・Lキー…クイックロード
・Tキー…テキスト窓を薄く Yキー…濃く
・Pキー
   スクリーンショット(デスクトップへ保存)
・Vキー
   (ボイスがある作品のみで)表示中の台詞をもう一度再生
・F9キー
    テキストをクリップボードへコピー

頒布

 2017/12/02、署名期限切れでインストール出来なかったりしたため、最新のライブラリなどでリビルドした ver 2.0 に更新しました。
 ※air ファイルを上書き更新する際は、旧版を一度アンインストールしてから開いてインストールしてください。
 ※旧版から新版へのデータ移行は基本的に出来ません。
 ※必ず体験版で動作検証を行ってからご購入ください。体験版が動作しない環境では製品版も動作しない可能性があります。








拍手コメ

【?】まさかすぎる新作、しかも二本立てということでとても楽しみです!制作陣も豪華すぎます…!発売が楽しみで夜も眠れない日々が始まりそうですね

 眠れぬ夜に縮外! スタッフ一同、励まされます(T-T)

【?】いつの発売ですかーーーーー?両方絶対の絶対に買いますので頑張って下さーーーい^^陰ながら応援しています。

 八月上旬予定のスケジュールです! 鋭意準備中です(`・ω・´)

【?】いいじゃない

でっしゃろ!

【?】きましたわー(感涙

あざす(´ω⊂

【?】文章がしゅりりんっぽい

そう?

【?】体験版DTできない…接続数エラーいつまで続くのであろう…

ご指摘から対応致しました><

【シュリンカー
書く】体験版プレイしました。徐々にドSになっていくところが、丁寧で良いですね。能力をどんどん使って欲しいです。新キャラの登場も謎を秘めていて先をプレイしたくなります。あと、体験版後に下から見上げた絵がたくさんあると良いなぁ、と思います。

あるよんっ(`・ω・´)

【orz】macだけどos10.5だから出来ないorz

せめてMac OS X v10.6 - Wikipediaがいいですよ! 【日本では3300円で提供】【新機能よりもパフォーマンスと安定性に注力し、システム本体と付属アプリケーションを含めたOS全体がよりコンパクトに】と、名作OSでしたし。でも今からならできれば最新のOS X Mountain Lion - Wikipediaにした方がいいかなぁと。

【?】AN-Jさんのノベルゲーがプレイできる日が来るとは思ってもいませんでした。体験版は素晴らしかったです!まさに自分が待っていたものでした。本編が待ち遠しすぎて部屋の中を無意味にウロウロしてしまいます。

いやほんま読ませますよね。演出も抑えつつ印象的に使われていて。

【今度はぼの系で】次は地仁田と成恵でほのぼの系なんかどうでしょうか?

ぜひ二次小説を!

【macha】プレイさせていただきました、中々楽しかったですあと後日詳細を報告したいのですが、一箇所だけ画面がホワイトアウトしたまま文字が流れて文章が読みにくいというバグがありますた、直せたらお願いします

また詳細お願い致します!

【?】体験版をプレイさせていただきました。私のPCだと下の方が少し欠けてしまうのですが、画面サイズの変更ってどうすればいいんですかね。

Wキーでフルスクリーン表示に出来て、画面ぴったりになるようです!

【ファン】体験版は3度プレイしてしまいました。早く続きがやりたいです!いつですか~??もう土日でプレイしつくしたいです(笑)

その望み……(キラーン

【?】本編プレイさせていただきました。内容はもう素晴らしいの一言でした!様々な濃密なシチュエーションに徐々に変貌していく成恵さんがたまりませんでした!ただ、欲を言えば素足のシーンもそこそこ多く、メロンブックスのほうで「素足」タグもついていたのでもう少しそういったシーンにイラストがあればな、と思いました。

レッツイマジネーション!

【?】体験版はプレイできましたが、メロンブックスで購入した製品版の方ではエラーメッセージが出てインストールできませんでした。OSはWindows7です。--インストーラーファイルが破損しているので、アプリケーションをインストールできませんでした。アプリケーション作成者に問い合わせて、新しいインストーラーファイルを入手してください。

少し間を置いて、或いはブラウザキャッシュをクリアしてダウンロードしてみて下さい。

【?】製品版がインストールできないとコメントした者です。Cドライブの空き容量を増やしたらインストールできました。

よかた(´ω⊂

【macha】どうも、時間が空いたのでちょっぴり検証した結果・「シフト」の入りで成恵の声が入るのが早すぎる(もしかして意図したもの?)・「シフト」ログ3ページ8クリック目(石を〜の所)で画面が演出?で明るくなるのはいいんですが、明るくなりすぎてテキストのバック透過度が0〜25%くらいだと文字が見えないor見にくい現象がありました・・・結果的にはどちらもバグとは言えないですね、お騒がせしました。よければ参考にしてくださいあととりあえず念のために公開しました、不都合があれば削除等お願いします。

ご意見有り難う御座います(_ _) 検討させて頂きます〜。

【?】実に素晴らしい内容でした。CGがすこし少ないようにも感じましたが、シナリオが濃いおかげであまり気になりませんでした。満足感が半端ないです。胸焼け起こしそうです。

ちょっと深呼吸した方がいいかも……さすがAN-Jテキストやで

【?】製品版を購入したのですがインストールできません。「エラーが発生しました。インストーラーファイルが破損しているので、アプリケーションをインストールできませんでした。」と表示されます。DLsiteで購入しました。OSはWindows7です。製品版をインストールしようとする前に、体験版をコントロールパネルから「プログラムのアンインストール」をしました。

続↓

【?】試しにもう一度体験版のほうをインストールしようとすると、こっちもインストーラーが破損していると表示されました。そういえば、プログラムからアンインストールをしようとした際、プログラムをダブルクリックしたあと、「アンインストールしますか?」など確認が何も表示されずにいつのまにかプログラムが消えていました。。アンインストーラーになんらかの不具合があったのかもしれません。

マシンの容量が足りないのかも。不要なファイルはどこかへ移すかして、ハードディスクに空きを作って下さい。

【?】macfee アンチウイルスプラス のリアルタイムスキャンを無効にしたらインストールできました(ガビーン)

そうきたか(´Д⊂

【lien】縮小学園外伝を今か今かと待っているときにふと目に留まったのですが、メロンブックスの『成恵の日記』紹介画像に、『マジパネー島』に行った後消息を絶つって書いてあるのですが、『ハンパネー』ですよね(;´Д`)

めっかった(´ω⊂ 文章は直したんだけどね……

【?】成恵がドSというより病んでいく話だったのでエロイというよりカワイソウになった

本来は成恵さんも可哀想なんですよね……

【?】感服です。さすがはあのNestの作者というべきでしょうか。気付けばノンストップで最後まで読み切ってしまっていました。縮小学園外伝をクリアしたのでもう一度読みなおそうと思っています。残虐に、悲愴に、堕ちていく姿はとても読み応えがありました。つなぎとしてだけじゃなくGTSとして完成度の高い作品でした。

気に入って頂けて私も嬉しいです!

【?】今更ですが成恵の日記をやりましたこの作品は日本だけに置いてのは勿体なさすぎますどうか海外の同士達にも翻訳版を公開してほしいですAN-J氏の話はヤバいですね長たっるい話しで最初は疲れながらも読んでたのに気が付いたら巨大な彼女に見も心も支配されてました(笑)

私の原作が短すぎるだけで(汗)、ノベルはある程度の長さで物語にどっぷり浸るのが醍醐味かもですねぇ

■日記の切れ端1

3月30日

 ヤバイゼ学園で起きた集団失踪事件。
 ケース「縮小学園」とファイリングされた一連の騒動は
 地仁田くんの活躍で無事、解決しました。

 学園の生徒さんや周囲の住民さんが
 とつぜん行方不明になったこの事件は、人間を縮小…
 なんと一㎝ぐらいに小さく縮めてしまう、
 未知の技術によって起きたものなのでした。


 分かるかな?
 人間を手のひらに乗っちゃうぐらいの、
 小っちゃな小っちゃな小人さんにしちゃう技術なの。


 …うん。もしこの日記を読む誰かがいたら、
 バカらしいって笑うんだろうなあ。
 でも、ぜんぶ本当の話なんだから。
 しかも小さくできたのは人間だけじゃなくて、
 建物とかも小さくできたみたい。

 一部の都市が消滅した事件も
 この「縮小学園」事件によるものだったのでは、と
 局長さんと地仁田くんは話していました。


『縮小学園事件』。その発端はヤバイゼ学園に
 新設された専心科学研究部…
 通称、先科研ができたコトでした。

 先科研の部員さんたちは一般生徒や
 学園周辺の男の子たちを縮小光線で縮めると、
 そのまま先科研の部室に拉致。
 小人になった人たちを『縮小人間』と呼んで、
 いろんなコトに使っていたそうです。


 調査にきた地仁田くんも先科研の罠にかかって
 縮小人間にされちゃったんだけど、
 なんとか自力で解除装置にたどり着いて、
 元の大きさに戻れました。さっすが地仁田くん!


 その後。
 わたしは元に戻った地仁田くんと、
 学園で知り合った男子生徒さんと一緒に、
 より深く事件の真相に踏みこんでいきました。

 先科研が出来た本当の理由。
 ヤバイゼ学園に転校してきた先科研の部長さんの、
 びっくりするような正体。
 そして……地仁田くんに追いつめられて、
 最後の手段に出た部長さんとの戦い。


「縮小光線にはもう一つの使い道があるのよ」

 そう言って部長さんは自分に縮小光線を向けたんだけど、
 なんと、小さくならずに巨大化しちゃったの!
 縮小光線のメモリを逆にした最終手段で、
 部長さんは70倍の大きさ…
 120メートル級の巨人になっちゃった!
 男の人が爪の上にのっちゃうぐらいの大きさなんだから。


 地仁田くんは戦車に乗って対抗したけど、
 アリが象に挑むようなもので、どうしようもなかった。

 わたしはもう必死で、
 なんとか地仁田くんの助けになりたくて、
 預かっていた縮小光線を自分に向けて———



 あとはご存じの通り、
 わたし、大記久成恵は今の状況になったワケです。

 身長100メートル級の
 巨人になっちゃったのは恥ずかしいけど、
 地仁田くんを助けられたんだから後悔はしてません。

 おっきな体も不便なコトばかりじゃないし、
 なにより、巨大化した部長さんを倒せたのは
 わたしが地仁田くんの盾になったからだもんね。
 えっへん!


 でも、事件はすべて解決…というワケじゃありません。
 部長さんは悪い人ではなかったけど、
 彼女の残した技術は、やっぱり危険なものです。

 部長さんが倒れた後、
 先科研の主要メンバーは行方を眩ませました。
 A会員であるエリート会員さんの何人かと、
 会員たちを統括していた四天王さん…


 兵器開発のトップだったレイナさん。
(地仁田くん曰く、ドリルさん)

 精鋭部隊の隊長だった鉄仮面さん。

 生物兵器の統括だったカナンさん。
(地仁田くん曰く、ムチ子さん)

 色々こまかい仕事をしていたっぽいみずほさん。
(地仁田くん曰く、ガト子さん)

 彼女たちの行方は目下、捜査中です。


 地仁田くんをさんざん苦しめたっていう
 副部長さんとエリカさんも、行方は知れません。
 でも副部長さんは四天王さんたちとは違って、
 先科研の技術じゃなく、部長さんに心酔していたようです。

 副部長さんは部長さんの本当の目的を聞いて、
 ちょっと改心したみたいだって地仁田くんは言ってました。

「まあ基本ひどいヤツなんだけど、面白いヤツというか」

 地仁田くんったら、困った感じで苦笑いです。
 むむ。なんか、少しだけ面白くないわたしなのでした。

-----------------------------------------------------
4月1日

 今日は地仁田くんと
 『縮小学園事件』の報告書を提出しにきました。

 巨人になったわたしは局長室に入れないので、
 ビルの外で待機中です。
 諜報機関の本部は都心にあるので、
 みんなの視線がすこく恥ずかしい…


 蚊が飛んでいるような音がしたかと思えば、
 わたしのまわりをヘリコプターとかが飛んでるし。
 足下のアスファルトなんてもう完全に陥没して、
 地面が向きだしになっちゃってる。
 このまま立っていたら地面を踏み抜きそうで、
 すこし不安になってきちゃった。

 つい本部ビルに手を掛けたくなるけど、がまんがまん。
 今のわたしがビルに体重をかけたら、
 中のみんなごと潰れちゃうよね。


 でも、意外だったのは足下のみんなの反応かな?
 好奇心とか、見世物とか、
 そんな気分で集まってきたりするのは最初だけなの。

「うわあ、お姉ちゃんでっかーい!」

 そんな風に様子を見にきた人は、
 わたしの足下まで来ると
 決まって近くのビルに駆け込んだり、
 車に乗って遠ざかっていったりします。

 なんていうか、本当に蟻さんを見下ろしている気分です。


 でもだいじょうぶ。成恵はくじけません!
 だって逃げていく人の気持ちぐらい想像できますから。
 きっと、遠くで見る分には面白いけど、
 近くによって見上げてみたら怖くなったんだと思います。

 そりゃあ身長○○○メートルの女の子がいたら、
 みんなビックリするよね。
 わたしだって、巨大化した部長さんを見上げた時、
 怪獣だと思ったもん。


 それに……はじめは傷ついたけど、
 慣れてくるとみんなの反応はそれぞれで、
 ナイショだけど、ちょっと面白かったのもホントです。

 中には足下まで寄ってきて、
 わたしの下着を撮影しようとする人もいたけど、
 そういういけない人は人差し指でつかまえて、
 わたしの目線までつまみ上げちゃうのです。

「うわぁー! 助けて、助けてぇー!
 ごめんなさい、もうしませんー!」

 泣きながらバタバタと動くカメラマンさんは、
 こっちが申し訳なくなるぐらいあわてています。

「神さま、助けて!」

 カメラを捨てて、
 両手で必死に祈る一センチぐらいの男の人。
 ……うふふ。ホントはわたしがおっきいだけなんだけど、
 そこは置いておいて。


「もしかして、神さまってわたしのコトですか?」

 男の人は神さまのいる空じゃなく、
 わたしに向かって一生懸命に祈っていました。
 わたしは上空100メートルの遙かな上空から
 自分の手のひらを覗きこみます。
 男の人は涙でくしゃぐしゃになった顔で、
 懸命にうんうんとうなずきました。

「もうっ、わたしはただの女の子です。
 神さまなんかじゃないですから」

 あきれて溜息をつくと、
 その溜息が強風になって男の人に吹きかかりました。

 つまみ上げられたその人はますます動転して、
 もう叫ぶコトしかしなくなっちゃっいました。


「そ、そんなにあわてないでください。
 わたし、何もしませんからっ」

 なんか、わたしも怖くなってきちゃって、
 男の人をそっと近くのビルの屋上に下ろします。

 屋上に下ろされた男の人はぶるぶると震えて、
 わたしを見上げています。
 ビルの高さが30メートルぐらいだから、
 今のわたしの膝上ぐらいでしょうか?


「でも次は容赦しませんからね。
 足下からのカメラ撮影は禁止ですよ?」

 優しく話しかけたつもりなんだけど、
 男の人はそれで半狂乱になって、
 ビルの中に逃げこんじゃいました。


「わたし、そんなに怖いのかな…」

 ちょっとどころか、かなりショックです。
 でも…いまの男の人のあわてぶりは、なんていうか…
 可愛そうだったけど、地面を這うネズミみたいで…

 わたしは自分でもよく分からないまま、
 ちょっとだけ、ゾクッとしちゃいました。


 そんな風に都心部の真ん中でひとり立っていると、
 局長室から地仁田くんが出てきました。

 長い廊下を歩く地仁田くんを見付けて、
 わたしは窓越しに話しかけます。

「(縮学のEDの地仁田の台詞」
「(同じく成恵の台詞。しばらくこのままでもいいかも、というヤツ)」
「(地仁田、驚き)」


 うん。半分は地仁田くんに気を
 付かわせないための方便だけど、半分は本当かも。
 巨人の視点から見下ろす小っちゃな街並みは、
 オモチャ箱みたいでちょっとだけワクワクするし。

 いつ元に戻れるかは分からないけど、
 嘆いてばかりもいられませんっ。
 せっかく大きな体になったんだから、
 これを役立てる方向で頑張らないと!

 成恵、ふぁいとー!

------------------------------------------------
4月7日

 今日、地仁田くんと別チームに配属されちゃった。

 というか、わたしだけ一人のソロになりました。
 いままで後方支援専門だったけど、うん、そうだよね、
 こんなおっきな体で後方も何もありません。

 気持ちを引き締めて、はじめての単独任務に
 臨みたいと思います。
 今までできなかったコトをするって決めたんだから、
 落ちこんでる暇はないのです!

------------------------------------------------
4月17日

 人命救助が、わたしのおもな仕事になりました。
 山岳の遭難者さんとか、
 嵐の夜の作業とか、
 たまに、建設作業のお手伝いとかもします。

 小さな人間の力じゃできないコトも、
 おっきなわたしの手にかかれば
 それこそ指一本で解決です。


 多くの人の命を救えるのも、
 組織のみんなから褒められるのも嬉しいけど、

「すごいな成恵さんは!
 なんかもう、被災地の女神みたいだ!」

 こんなふうに、地仁田くんが
 我が事のように喜んでくれるのがいちばん嬉しい。
 地仁田くんは、そのコトに気が付いていませんけどね。

------------------------------------------------
4月23日

 恥ずかしくて日記を書く気力もないんだけど…
 やっぱり、ちょっと書いておきます。

 今日、わたしの装備に関して、問題があがりました。
 沖合のタンカーを引き上げる作業だったんだけど、
 わたし用の水着を用意してもらえなかったんです。

 それどころか、実はわたしの普段着の替えも
 用意できない事が分かりました。
 …下着、もう何日代えてないんだろう…やだなあ。


 そして、油でぬるぬるの海に入るのは、
 ものすっっっごく気持ち悪かったです。

 重油の中でぷかぷか浮かんでいる船員さんたちを
 手のひらですくい上げる時も、ちょっとイヤでした。

 一昼夜、重油の海で遭難していた船員さんたちは
 パニックになっていて……手のひらの上から、
 わたしのコトを化け物、化け物って繰り返すのは
 やめてほしかったです。


 こっちも気持ち悪かったのに…
 もっと早くに助けに来い、うすのろ、化け物、とか…
 わたしだって、辛いコトいっぱいあるのになあ…

 でも、仕方ないですよね。
 わたしはみんなより何十倍も強いんだから、
 これぐらい我慢しないと!

------------------------------------------------
5月1日

 地仁田くんと久しぶりのチームです!
 しかも素敵なトラブルありました!

 もうお馴染みの山岳遭難者の探索。
 ヘリコプターの動員とか
 救援隊の派遣には一千万円以上の費用がかかるんだけど、
 わたしなら一日でなんとかなっちゃうのです。


 一つ一つ山を覗きこんでいって、
 岩陰で倒れている遭難者さんを発見、救助して、
 ヘリコプターを呼んで、
 病院まで連れて行ってもらえば任務完了です。

「さっすが成恵さん!
 物陰から人間を見付けるのはもうお手の物だな!」
「うん! おっきくなって目も鼻もよくなってるみたい。
 物陰に隠れている小人なんてわたしにかかれば簡単…
 じゃなくて、倒れて動けない人なら、
 すぐに見付けられるようになっちゃった」


 あぶないあぶない。
 わたしから見たらみんなちゃっちゃな小人だけど、
 地仁田くんから見たらそうじゃないんだし。
 人間を小人と言わないよう、気をつけなくちゃ。

「じゃあ成恵さん用のキャンプに帰ろ…うわあ!?」

 わたしが急に体を起こしたせいです。
 肩に乗っていた地仁田くんは足をすべらせて、
 わたしの制服の胸元にまで転がっていってしまった。

「きゃ!? ち、地仁田くん、落ちたら死んじゃう!
 どこでもいいから掴まって!」

 地仁田くんはわたしの胸元から胸の間を滑り落ちて、
 おへそのところでなんとか止まったけど、
 結局、ショーツまで落ちちゃいました。


 そ、その後のコトはナイショです。
 …モゾモゾとくすぐったかったけど、
 すっごくドキドキしちゃっいました…。

 地仁田くん、わたしのアソコ、どうだったのかな…?

------------------------------------------------
5月10日

 ここのところ、一人きりの仕事ばかりです。
 うっぷんがたまっちゃいます。

 地仁田くんは都市部の仕事で、
 わたしは人のいないところの仕事だから
 しょうがないんだけど……さみしいなあ。

------------------------------------------------
5月20日

 最近、みんなからの視線が
 変わってきた事に気付きました。

 わたしは多くのものを消費します。
 食べ物も、場所も、それと、みんなの仕事も。

 わたしは重宝されるようになって、
 局長さんのおぼえもよくなりました。
 けど、それで立場を失った人たちも多いみたいです。

「あのデカ女、恥ずかしくないのかね?
 局長賞なんて、あんだけでかけりゃ誰でも貰えるだろ」
「あの娘が一日で食べる食事量だけで、わたしたちの
 給料一ヶ月分よ。鯨でもあんなに食べないでしょうに」
「体臭もきついしなぁ…。
 そろそろ元に戻ってくれないと臭くてたまねえぜ」
「知ってる? あの娘のだしたウン/コ、北海道に運ばれて
 肥料にされてるんですって! ホーントみっともない、
 野菜が十倍の早さで育つって評判らしいわよ?」
「…いやおまえ、それはいいコトじゃないか?」


 なんか、わたしは邪魔者みたいです。
 別に、あんな小人たちに悪口を言われても
 気にならないし、本当のことだから
 わたしが怒るコトでもないと思います。
 ただ、心配なのは

「…そうだよね。こんなおっきな体になって、
 地仁田くん、私のこと嫌いにならないかな…?」

 地仁田くんが、他のみんなみたいに、
 わたしを怖がるようになっちゃったら、どうしよう。

------------------------------------------------
5月26日

 また、あの夢を見ちゃいました。
 ヤバイゼ学園で、足下にたかる虫を踏み潰す時の夢です。

 忘れようとしているのに、なんで思い出すんだろう。
 夢の中のわたしはわたしじゃないみたいで、
 あの夢を見た朝は、決まって胸がすっきりしています。

 今度お医者さんに相談してみようかな…でも…
 夢の内容を話したら、わたし、隔離されちゃうかも…

 地仁田くんには相談できない。
 こんなコト知られたら、それこそ本当に嫌われちゃう…

------------------------------------------------
5月29日

 海外での任務をいただきました。
 場所は秘密だけど、
 任務内容は紛争地帯での要人の救出だそうです。

「成恵さん、本当にひとりで平気か?
 やっぱり俺も同伴できるよう、局長にかけあってみる」

 地仁田くんからのメールに、すかさず返信。


「ううん、大丈夫っ!
 すぐに帰ってくるから、大船に乗った気で待っていてね」

 話を聞いて、すぐにメールをくれただけで
 成恵的には十分でした!
 さあ、はりきって任務にあたります!



■日記の切れ端2
6月1日

 山岳地帯の反政府組織に、
 政府の要人さんが捕まっているとのコト。
 初の海外・単独任務は人命救助…になるのかな?

 詳しい場所は書けませんが、
 とにかく見渡すかぎりの山岳地帯!
 ここだと100メートルのわたしでも、
 単独任務は厳しいかも。


 日本の山とは違う、密林の山々は少しだけ歩き辛い。
 木々は日本のものより高くて、
 膝下ぐらいまで隠れちゃいます。

 デコボコの山岳地帯を歩いていると、
 わたしより高い山にもぶつかります。
 都心のビル街での人捜しより、
 ここでの人探しは難しそうです。

 任務期間は一週間。
 それまでにゲリラ組織さんの基地を
 見つけ出せればいいんだけど…

------------------------------------------------
6月2日

 山間を移動している時、足下がチクッとした。
 視線を下ろすと、
 パパパ、パパパ、と火花が散っていました。

 それがゲリラさんたちのアサルトライフルの
 火花だと気付くの、三分ぐらいかかっちゃった。

 だってぜんぜん痛くないんだもん。


 ゲリラさん御用達、安価かつ頑丈なAKぐらいじゃ、
 いまのわたしには蚊に刺された程度のダメージです。
 でも、蚊に何度も刺されるのは
 わりと面倒というか、うざいというか。


 なんとか潰さないぐらいの力加減で地面を蹴って、
 ゲリラのみなさんを追い返しました。

 いまので何をやっても無駄だって
 分かってくれればいいんだけど…。
 あれ? 一人、逃げ遅れた兵士さんがいる…?

------------------------------------------------
6月3日

 逃げ遅れた兵士さんを助けてあげました。
 一時的に身柄を預かる、というヤツです。

 三十歳ぐらいの男の人で、
 今はわたしの手のひらの上にいます。
 たとえるならサイコロぐらいの大きさかな?
 密林にいるよりわたしの手のひらの方が安全だし、
 いちおう、捕虜さんですから。

 わたしはコホンと咳払いをして、
 二センチぐらいの兵士さんに話しかけます。
 もちろん、相対的な計りですよ?

「すみません。貴方たちが捕まえている、
 政府の要人さんはどこにいるんですか?」

 兵士さんは体育座りで頭を隠して、
 必死に耳を押さえています。

「わたしは何もしませんよ。
 兵士さんの安全は保証しますから、教えてください」

 何度かお願いしたんですが、
 兵士さんはライフルを抱いて震えるばっかりで、
 わたしを見上げてさえくれません。

「……もう。
 分かりました、地面に下ろしますから、
 仲間のところに戻って…あれ?
 兵士さん、足、ケガしてません?」

 兵士さんの左足はぽっきり折れていました。
 …手加減したけど、わたしが蹴り上げた
 土砂に巻きこまれた結果でしょう。

「……わたしのせいです。
 せめて怪我が治るまでは保護させてください」

 ちゃっちゃな兵士さんに手当をして、
 ガーゼで優しくくるんで、ポケットに仕舞います。
 民家がある山を見付けたら、
 そこで下ろしてあげますから、我慢してくださいね?

------------------------------------------------
6月4日

 わわ、またもゲリラさんの攻撃です!

 今日は前回より派手目でしたが、
 しょせんはこびとの攻撃です。
 戦車砲を受けるとさすがにズシッと響くけど、
 やっぱり何ともありません。


 ゲリラの皆さんも諦めてくれたのか、
 半日ほどで撤退してくれました。

 わたしはただいま、
 近くのダムを利用して休憩中。
 こうして日記を書い、


 …まったく。
 日記を書いていたのに、やむなく中断してしまいました。

 今は問題を解決して、
 こうしてサラッと日記を書いています。

 うん、でもビックリしちゃった。
 ダムの堤防に日記を置いて書いていたんだけど、
 ダムの施設の中にひとり、
 こしゃくな小人さんが隠れていたの。


 小人さんは建物から出てくるなり、
 わたしの頭めがけてロケットランチャー…
 RPGを発射しました。
 生意気なことに、きっかり成恵の側頭部に命中です。

 やるなあ、名もない一般兵さんったら。
 思わず摘み上げて、ぷちっとしたくなっちゃうぐらい
 可愛いです。


 ま、わたしは日記を書くためにかがんでいたし、
 日記に集中していたから、
 たまたま当たっただけなんですけどね。

 でも、RPGはちょっとまずい。
 アレはもともと戦車の装甲を貫通するためのもので、
 爆発で人体を焼くんじゃなくて、
 貫通してから爆発するものなの。

 だから、ちょっと頭に響いちゃった。
 アザができた程度だけど、
 脳しんとうを起こしちゃったみたい。


 わたしは何秒か目眩を起こしていて、
 気が付いたらダムは崩れていて、
 兵士さんは何処にもいませんでした。

 ま、どうでもいいけど。
 それより、そろそろお仕事に戻らないと。
 密林地帯の山とか暑くて不快で汚くて、
 これ以上いたくないし。
 わたしはポケットからアレを取り出しました。

兵士「!?*☆;].☆!!!!?」

 うるさいなあ。
 キイキイ叫んでいるけど、それだけ回復したってコト?
 丁寧に手当してあげたから、
 足の骨折もだいぶよくなってきたみたいね。


 まったく、わたしも人がいいんだから。

 コイツ、手当をしてあげてる時、
 恩知らずにもわたしに向かって銃を乱射したんだよ?
 鼻にあたったり目にあたったりして痛かったんだから。

 ま、それも———

兵士「……!!! ———!!、———!!」

 タスケテ、タスケテ、って叫んでるのかな?
 この国の言葉は分からないけど、
 悲鳴は万国共通だから命乞いをしているのだけは
 ちゃーんと分かります

 ふふ。わたし、そんなに怖い顔してるのかな?
 さあて……わたしの手のひらの上の、
 ちっちゃなちっちゃな敵兵さん?
 兵士を捕まえた軍人にらしく、
 こわーい尋問をはじめてあげる(ハートマーク)。
(※黒成恵のターン、終わり。また成恵に戻る)

------------------------------------------------
6月5日

 やったー!
 要人さんが捕まっている基地を発見!

 メモにあった場所に行くと、
 山の中腹、密林に隠れてトーチカがありました。
 そこに要人さんが捕まっているのは明白です。

 近づくと機関銃の一斉掃射が待っていたけど、
 我慢して接近、トーチカごと引き抜いて、
 要人さんを無事、確保しました!

「あの、お怪我はありませんか……?」

 トーチカをひっくり返すと、
 要人さんはポカーンとした顔でわたしを見上げきました。
 トーチカ中にはまだゲリラさんもいるので、
 要人さんだけつまみ上げて、
 手のひらにそっと置きました。

 あとは指を立たせれば、どんな攻撃がきても安全です。
 真上からロケット弾でも撃たれないかぎり、
 成恵はびくともしませんから!


 わたしはトーチカをゆっくり山に下ろして、
 要人さんに事情を説明します。

 要人さんは四十代後半の、
 ちょっとでっぷりした男性でした。
 はじめは呆然としていた要人さんでしたが、
 ようやく状況を把握してくれたようです。

「では、おまえが儂を助けに来たエージェントなんだな?」
「え? 日本語、喋れるんですか?」
「当たり前だ。儂がおまえの国にいくら
 つぎ込んでいると思っている。
 話のできん相手と商売をするなど馬鹿のするコトだ」

 驚きました。ペラペラです。
 ともあれ、これで任務完了!
 やっとみんなのところに帰れる、と思ったんだけど…

「何をしている。まだやつらが生きているだろう」

 要人さんは、おかしなコトを言いだしました。
 さっきからわたしの足下で
 、一生懸命、機銃を撃ってきているゲリラの皆さん。

 要人さんは彼らを、彼らを、


「そんだけでかい体をしてなにを呆けておる!
 さっさと踏み潰さんか、化け物!」

 ———。
 要人さんの言いたい事はわかります。
 捕まっている時、どれだけ怖い目にあったのかも
 想像できます。
 でも、わたしの仕事は要人さんの救出であって…

「ええい、通信装置をよこせ!
 おまえの飼い主と話しをさせろ!」

 任務規定は、要人さんには絶対服従。
 …わたしは逆らえません。
 わたしが使っていた通信装置を使ってもらうと、
 要人さんと局長さんは何やら話して、


『…成恵くん。気持ちは察するが、我々の職務は
 彼の護衛だ。彼が、敵組織が健在である事に危険を
 感じるというのであれば、彼の指示に従ってくれ』

 わたしは、どうすれば良かったんだろう…?


 ああ、きっもち良かったーーーーーーー!

 もうメッチャクチャにしちゃった!
 ゲリラさんたち、今までわたしが
 反撃しなかったからって甘く見てたみたい。

 ふふ。退却経路も用意してなかったから、
 いざ「やばい」って分かっても後の祭りだったんですよ。


 ゲリラさんたちの手持ちの弾薬がつきて、
 もうどうしようもなくなったところで
 わたしは要人さんに言われる通り、
 一歩一歩、ゆっくり進んであげました。

 ドシン。崩れる山肌。
 ドシン。潰される密林。
 ドシン。わたしの靴の底で爆発する戦車。
 ドシン。わたしの目の前に、
 オモチャみたいに並んだゲリラさんたち!


 あの人たち、
 わたしが足を振り上げるたびに右往左往して、
 半分は自分から谷底に落ちていっちゃいました。

 でもま、本気になればあんなの五分かかりませんけどね。
 わたしはきれいさっぱり山間から小人たちを掃除して、
 ベースキャンプに戻ることにしました。

 あ、わたしの手のひらで「もっと殺せー!」
 なんて騒いでたおじさんですか?
 あの人なら、最後に落ちちゃっいました。
 興奮しすぎて、
 わたしの手のひらから乗り出しすぎたんです。

「やめろ、息を吹きかけるな、やめろ、やめてくれ、
 頼む、助けてくれーーーー!」

 何か喋っていたけど、小人の声なんて聞こえないし。
 あはは。自分から死なれちゃあ、
 わたしだって助けようがありませんよね?



 ベースに戻って報告したら、
 みんな、わたしの姿を見て黙りこんじゃいました。

 そうですよね。
 一個師団の精鋭のゲリラさんたちが、
 わたしの左足だけで壊滅したんだもの。
 誰も今のわたしに意見なんかできません。


 そう。これが今のわたし。
 わたしは強い。わたしには誰も勝てない。
 ホント、わたしったらどんくさいにも程がある!
 これだけの力を持っているのに、
 なんで縮こまってないといけないんだろう!

------------------------------------------------
6月7日

 みんなのいる日本に帰ってきた。

 結果的に任務は失敗したけど、
 局長さんは「よくやってくれた、成恵君」と
 おとがめはなしだった。

 たしかに、わたしは任務通り要人さんを
 ゲリラさんたちから無事、救出した。
 その後の顛末は、
 要人さんの過失という事になったらしい。


 ……でも。
 みんなの目は、以前より冷たい。

 前は頼りにされたり、同情されたり、
 迷惑がられていたりしたけど、あんな目はされなかった。

 …あれは、そっか。
 みんな、わたしを怖がっているんですね。

------------------------------------------------
6月10日

 …はあ。憂鬱だなあ。
 陰で悪口を言われるのも慣れたけど、
 もうちょっとだけ気を遣ってほしい。

 わたしの聴力はみんなの百倍以上なんだから、
 聞きたくなくても聞こえちゃうんだよ?

------------------------------------------------
6月13日

 またあのタイプの夢を見た。
 でも今度のはちょっと違う。
 わたしは普通の大きさで、
 テーブルには、小さな街のミニチュアが置かれていた。


「わたしが大きいんじゃないんですよ?
 皆さんが小さいだけなんです」

 わたしは満ち足りた気持ちで、
 ミニチュアの街に手を掛ける。
 すると不思議なことに、ミニチュアの街は
 もっともっと小さくなっていって、
 最後には芥子粒ほどの大きさになっていった。


 …小さく、小さくなっていく街のみんな。
 泣いたり叫んだりしながら、
 見下ろすわたしから逃げていく米粒みたいな人たち。
 ビルは積み木みたいに脆くて、
 指で摘み上げると、ポキリとお菓子みたいに崩れていく。
 まるでウェハースみたい。
 口にふくんでみたら、
 きっと、甘くて美味しいに違いない。

「アハハ、もうサイッコー! どこまで
 小さくなるか試してあげますね、虫ケラさんたち!」
(※画面背景・真っ白に)


 …そうして、悪夢にうなされて目を覚まします。

 体じゅう、じっとりと汗をかいていて、
 不安になって周りを見ると、そこは
 わたし用に造られた簡易テントでした。
 特製の鏡に映ったわたしは、いつもの大紀久成恵でした。
 みんなより何倍も大きなわたしは、
 簡素なベースの中でみんなの邪魔にならないように、
 小さく小さく、縮こまっているんです。

------------------------------------------------
6月14日

 昨日はネガティブな日記を書いちゃいましたけど、
 わたしはまだまだ平気です!
 いい人だって多いし、
 地仁田くんは暇さえあれば会いに来てくれますし。

「なんだ、そんなの気にするコトないぜ成恵さん。
 悪夢なんて誰だって見るもんだよ。
 俺なんて、夏休み最後の一日をエンドレスに繰り返す
 夢を見てさー! もう製作サイドは狂ったのかと
 思うぐらい、とんでもない悪夢だったぜ」

 こんな風に、地仁田くんだけはいつも通りです。
 おっきなわたしを前にしてもぜんぜん怖がらないし、
 あんなちっちゃな体なのに、
 わたしを守ってくれています。


「みんなが地仁田くんみたいならいいのにね」

 思わず口にして赤面しちゃったけど、
 地仁田くんは気付いていないようだった。

 …うん、分かってる。
 そんな人は他にいない。
 優しいのは地仁田くんだけだって、
 わたしだって、もう分かっているんです。

------------------------------------------------
6月15日

 地仁田クン人形とか作ってみた!
 地仁田くんより大きいのが玉に瑕だ。
 …恥ずかしいので、地仁田くんに見つからないよう、
 こっそり持ち歩くコトにしよう。

------------------------------------------------
6月18日

 今日のわたしは、ちょっと、
 ううん、かなり機嫌が悪い。

 いつもの悪口が聞こえてきたのはいいけど、
 その内容が酷かったから。

「地仁田も物好きだよなあ。
 つーかアイツ、おかしいって。
 あんな化け物女の相手とか、どんだけ物好きなんだよ。
 あ、他に落とせる女がいねえからか、ギャハハ!」

 …悔しかった。
 わたしがバカされたコトより、
 地仁田くんがあんな人に笑いものにされているのが、
 悔しくてたまらなかった。

------------------------------------------------
6月22日

 ベース内で行方不明者がでたらしい。
 昨日から無断欠勤しているんだって。

------------------------------------------------
6月24日

 いつもの単独任務を済ませてきました。
 都市部での火災、救助作業はもう慣れたものです。
 ルーチンワークすぎて何も感じません。
 嬉しいとも、辛いとも、なんとも。

 テントに帰って汗を拭くために制服を脱ぐと、
 おかしいモノを発見しました。

 下着の中には、ピクピクと動く虫。

 わたしはさっきの救助作業みたいに、
 まったくのルーチンワークで摘み上げて、
 40メートルサイズのゴミ箱に、ぽいっと放り込みました。

------------------------------------------------
6月28日

 新しい任務をいただきました。
 近頃、ある島の周辺で消息をたつ船が多発するそうです。
 密漁船の仕業、とも言われています。
 わたしの今回の任務はその海域の調査と、
 密漁船の発見、拿捕。

 よし。
 島の平和を守るために、がんばらないと!


 …地仁田くんに声をかけたかったけど、
 地仁田くんは『謎の都市消失事件』を
 調べに出ているので、ベースにはいません。

 でもまあ、すぐに帰ってこられるだろうし!
 おっきな成恵さんにとって、
 密漁船を捕まえるなんてもう朝ゴハン前ですから!

 待っててね、地仁田くん!
プロフィール

Nishikujyo Kitaraf

Author:Nishikujyo Kitaraf
変態紳士同人作家 Mail(星は@に)

最近の記事
ブログ内検索
カテゴリー
同人作品









リンク
translation
月別アーカイブ